研究概要 |
平成19年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において,申請者は以下のような具体的課題に取り組んだ。 (1)資金アクセス難がいまだ見られる中国民営企業が日常の企業活動のための資金をどのように調達しているのかについての実態解明を行った。 具体的には,江蘇省南部地域における民営企業へのヒヤリング調査を通じて,売掛金の円滑な回収,買掛の可否といった企業間信用授受の成功可否が民営企業の日常の企業活動における資金回転を円滑にする重要な要素となっていることが見出された。これまでのヒヤリング調査で得られた成果の一部は,論文としてまとめられ,現在投稿中である。 (2)中国企業において民営化にいたる過程で企業自身がどのように変化したのかについて明らかにした。これは,中国企業が市場経済化の進展とともに営利を合理的に追求する組織に改変しえているのか否かを検証するものであり,民営化後における中国企業の企業行動の実態解明を資金調達に注目して行った上述(1)の分析の前段階に位置づけられるものである。 具体的には,江蘇省蘇南地域の郷鎮企業を取り上げ,当該テーマについて実証的に分析を行った。かって管轄政府が経営を行っていた集団所有制郷鎮企業が,1990年代を通じて(すなわち郷鎮企業が民営化を経験する直前段階である)どのようにその行動様式を変えていったのかを分析した。分析の結果,当該地域の集団所有制郷鎮企業は,当該地における市場経済化の進展とともにかつてのコミュニティ企業としての義務を負った企業としての行動から,次第に利潤追求を最大の目的として行動するように,その様式を変化させていることが明らかになった。この成果の一部は論文としてまとめられ,「郷鎮企業の経営目的の変化-コミュニティ企業から利潤最大化企業へ-」『経済情報学論集』第23号(姫路獨協大学経済情報学部)に掲載されている。
|