研究概要 |
平成19年度に交付を受けた科学研究費によって,申請者は以下のような研究を行い,成果を得ている。 中国における企業民営化の潮流は既に各地域の農村にまで及んでおり,地域差はあるものの民営企業は既に中国経済の重要な構成要素となっている。そして,企業民営化は企業の活性化,企業業績の向上に貢献をしていることが実証分析より明らかとなっている。 このことを確認の上,市場環境の点からは他の所有制企業よりも不利な立場にあると指摘されてきている民営企業の育成・存続・発展の重要な鍵であるその企業間信用・企業間貸借に関する聞き取り調査を,江蘇省無錫市の民営企業を中心に行った。 これより,中国民営企業を取り巻く市場環境は以前よりも改善されてきていること,ただし資金難はまだ全面的解決が見られておらず,流動資金に依存するという構造的問題が見られること,そしてそのためには確実な代金回収が販売促進と並んで重要課題であることが見出された。民営企業はこの代金回収のために,厳格な信用調査を行っていること,及びそれによって獲得された情報の蓄積,更には代金回収の経験を踏まえたマニュアル化もある程度進んでいること,これらの中心的役割を販売担当員が担っている場合が多いこと,等が明らかとなった。 上述については,「中国民営企業の代金回収戦略」『近きに在りて-近現代中国をめぐる討論のひろば-』等にまとめられている。 本研究は,中国民営企業の持続的成長を可能にするという点で重要性が高まりつつある掛売り,信用取引の実態解明を行うという点で重要であり,また今後の掛売り,信用取引発展への具体的方策を提言可能にするという点で意義がある。
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