本年度は、前年度に社団法人インターネットサービスプロバイダー協会に加盟しているインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)を対象に実施した情報セキュリティ対策に関するアンケート調査結果の分析を行った。その結果、以下の2点のことが明らかになった。まず、多くのISPが(過去に実施した同様のアンケート調査と比較して)情報セキュリティ対策・投資に対する意識変化が見られた。具体的には、依然としてISPの経営状態は良いとは言えないものの、企業の社会的責任(CSR)を意識して対策・投資を実施するとともに、ユーザに対しても種主の啓発活動を行っている。次に、近年各省庁から独自に情報セキュリティに関する法律等が施行され、その対応に(比較的従業員数の少ない)地方ISPでは限界を感じていることがわかった。これらは、ISPは情報セキュリティ対策・投資への積極的な態度が見られるものの、法律等に関する政府のコーディネーションが特に行われていないことによる生産性や効率性が低下していること、また逆に情報セキュリティ水準が低下してしまう危険性が示唆している。そうならないためにも、政府は情報セキュリティに関する環境(特に、省庁横断的な法整備)を早急に整備していくことが望まれる。 この他にも、本年度は、spamメールの経済に与えるインパクトについても公表データ等を用いて測定した。そして、その被害の低減には各ISPによるOP25B(Outbound Port 25 Blocking)の実施が有効となることについての示唆を与えている。 上記の研究成果は、雑誌論文、著書や国内外の学会や研究会発表において積極的に公表してきた。また、アンケート調査結果は報告書を作成し、(報告書を希望した)ISPおよび関連各所に郵送をして意見を求めた。
|