本年度はこれまでの研究をふまえ、日本における子供費用の推計結果をまとめ、既存の他の実証分析の中に位置づける作業を行った。本研究の実証分析結果によると、子供費用の等価スケールは約1.1であることが明らかになった。これは、標準的な家庭が子供を一人多く持った場合、子供を持つ前の生活水準を維持するためには、約10%の所得上昇が必要であることを意味する。こうした研究は海外ではある程度行われているが、日本のデータを用いた研究はそれほど多いわけではない。子供費用の推計を行う場合、説明変数の内生性が問題になる。本研究では、双子を持つ家庭のデータを利用することにより、この問題を回避する工夫が施されている点に特徴がある。研究成果の一部については、2008年12月4日にオーストラリア国立大学で開催されたARNJE(Australian Research Network on the Japanese Economy Workshop)において報告を行った。オーストラリアでは、少子化の進行度は日本に比べるとはるかに遅いが、女性の権利保護の観点から伝統的に子供費用の研究が大変盛んである。これらの研究成果をふまえて本研究の位置づけを見直すことができたことは、本年度の重要な研究成果であった。一方、韓国データの分析については、データ解釈上の困難などが影響して、予定していたペースで研究を進めることができなかった。この点については今後も一定の研究成果が得られることを目標に、継続して研究を進める予定である。
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