2006年に生じた北海道夕張市の財政破綻問題は二つの問題を提起した。一つは破綻した財政をいかに再建するかであり、いま一つはこうした事態を事前に把握できなかったのかという問題である。前者については破綻法制の議論が活発化しているが、後者については様々な指標を提案するだけで終わっているものが多い。また、こうした動きを受け、政府でも新たな財政指標として実質公債費比率というものを示したが、ストックに関する財政指標については検討課題とされ、喫緊の課題となっている。 平成18年度の研究では、ストックに関する財政指標の確立に資するべく、近年普及しつつある総務省方式の自治体バランスシートについて、財政再建団体を事例に実効性のある活用法を検討した。具体的には、財政再建団体の近年の事例として福岡県旧赤池町と北海道夕張市を取り上げ、普通会計を対象に過去に遡って総務省方式のバランスシートを作成し、その変化を分析した。総務省方式のバランスシートを過去に遡って作成するのは、本研究が初めての試みである。 研究の成果は次のようにまとめることができる。第一に、現行制度では自治体においても債務超過の概念が財政破綻の定義として有効であることを示した。第二に、自治体の債務超過は存続を前提として定義する必要があることを示した。第三に、財政再建団体の事例分析から、総務省方式を用いて評価する方法として正味資産のうち一般財源等で債務超過を判断する方法について検討し、偶発債務も含めることである程度の事前予測性が期待できることと、連結による評価が重要であることを示した。
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