本研究では、銀行が土地担保融資を行っている状況下で、銀行の貸出インセンティブと景気変動がどのように関係しているかを分析した。特に、ソフトバジェット問題によって銀行が不良企業に追い貸しをするインセンティブを持っている時、負の生産性ショックがどのように各経済主体の行動に波及していくかを考えた。 本論文では、負の生産性ショックが与えられると、二つの経路で景気を停滞させることになることを示した。一つ目は、負の生産性ショックによって不良企業の割合が高まるので、銀行がソフトバジェット問題に直面するようになり追い貸しが増えるという経路である。二つ目は、不良企業への追い貸しによって、生産要素である土地市場が事後的に逼迫し、将来の地価が上昇する。これが事前の土地担保価値を上昇させ、事前の投資が増加し、結果として事後の不良企業の数が増えるという経路である。 以上より、本論文では、銀行が土地担保融資を行っているとき、負の生産性ショックは不良企業の割合を増やし、生産部門の質を低下させるという直接的な経路だけでなく、追い貸しを通じた担保価値の上昇によって、企業の投資を促すことから不良企業の数を増加させるという間接的効果が加わるため、景気の低迷がより深刻化することを示した。
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