本研究では、銀行が追い貸しを行うインセンティブを考慮したもとでの景気変動のあり方について研究を行った。銀行の追い貸しインセンティブは、Berglof and Roland(1997)を参考にソフトバジェット問題として捉え、さらに銀行が資本市場の不完備性のために担保融資を行わざるを得ない状況で、どのような景気変動が見られるのかという点について理論モデルを構築することで明らかにした。その結果、経済に負の生産性ショックが与えられると、銀行が土地担保融資の下では、担保価値の下落を防ごうとするインセンティブを持つため、ソフトバジェット問題を引き起こし、不良企業への追い貸しを選択する。さらに、このことは同時に新規企業の参入を妨げるため、経済は長期的に停滞する。こうしたメカニズムは、日本の失われた10年の長期停滞を説明するメカニズムを示唆するだけでなく、東欧の移行経済でみられた景気変動などにも説明できると考えられる。また、この論文では、銀行中心の資金供給体系を考えたが、シンジケートローンや証券化といった枠組みを考慮すると、現在のサブプライムローン問題を発端とする景気変動にも適用可能である。こうした研究成果は、現在海外雑誌への投稿(再投稿済み)という形で表れている。
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