本研究は中小企業金融に関するデータを用いて、借り手と貸し手の情報の非対称性の問題が中小企業の資金調達行動にどのような影響を与えるのか、実証的に分析することを目的としている。第一の目的は、金融機関とそれ以外の資金調達主体に注目し、どのように情報の非対称性の問題を解決しているのかを明らかにすることである。第二の目的はマクロショックが中小企業の資金調達行動にどのように影響を与えるのかを明らかにすることである。第三にどのような中小企業が倒産に至るのかを分析することである。 上記の研究目的に基づき、平成20年度は、債務超過企業に焦点を当て、どのような中小企業が倒産に至るのか、分析を行った。この研究成果は、12月に『信用保険月報』にて発表された。また、第一の目的と関連して、金融機関の金利水準が中小企業の企業間信用の動きにどのような影響を与えるかを分析した論文が、英文学術雑誌、Applied Economicsに掲載された。最後に不況期において、資金繰りが悪化した中小企業が、企業間の信用供与をどのように行うかを分析した。この分析結果はまだ学術雑誌には発表されていないものの、日本経済学会などで成果を公表した。 上記の分析は、すべて中小企業の個票データを用いて分析したものであり、従来の分析よりも詳細な結果を得ている。
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