| 研究概要 |
中小企業庁から入手した企業資金調達環境実態調査(2001),金融環境実態調査(2002),企業金融環境実態調査(2003)の個票データと,日本金融名鑑等から収集したデータに基づき算出した各都道府県の中小企業融資市場の競争度を接続したデータを用いて統計分析を行ったところ,競合する金融機関の数とリレーションシップバンキングの関係,あるいは中小企業の融資利用可能性に関して,以下のような実証結果を得た.
1 競合する金融機関の数が多い地域ほど,リレーションシップバンキングが行われにくい.ここで,リレーションシップバンキングとは,メインバンクが「財務診断等各種助言やアドバイス」など融資そのもの以外の付加的コンサルティングサービスの提供を意味する.この結果は,金融機関の規模,公的信用保証による保証比率,企業の財務状態等を全てコントロールした上で得られたものである.ちなみに,金融機関の規模が大きいほど,公的信用保証の保証比率が高いほど,また,中小企業の中でも比較的規模の大きい企業ほど,リレーションシップバンキングが行われやすいことも分かった.
2 競合する金融機関の数が多い地域ほど,中小企業が起業後初めて融資を受けるタイミングが遅くなる.これは,地域の経済成長率,経営者の資産保有,業界経験年数などをコントロールした上で得られた結果である.なお,事後的に1に述べたようなリレーションシップバンキングを行う意欲のある金融機関ほど初融資を提供するタイミングが早いこともわかった.
これらの結果は,書籍の章,あるいは英文ディスカッションペーパーとしてまもなく公表される予定であり,とくに後者については学術雑誌に投稿する予定である.
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