本年度は学術論文「自治体合併における選挙と特定利益団体」を査読付学術雑誌である現代経済学研究の特集号に投稿し、修正等を加えながら掲載可となり、平成21年6月に出版予定となった。本論文では選挙で地域の代表を選出する2地域において、一方の地域のみが他地域に外部性を及ぼす公共財を供給することが可能で、そのような地域の代表に公共事業を受注することで利益を得る特定利益団体が、政治献金によって公共財供給を過大に歪めようとするときに、2地域の合併がどのような形態になるか、そしてそのような状況で各地域の代表はどのようなタイプの個人が選出されるかという観点で分析を行っている。結果としては、特定利益団体は公共財供給可能な地域での代表選出の選挙において、住民が戦略的投票を行うインセンティブを与え、その結果、社会的に望ましい公共財供給水準は実現されないことが確認されている。また、公共財の外部性が正のときは、地域間の合併交渉は合意に達することはなく、外部性が負の場合にのみ合併が合意に達する可能性があるばかりでなく、合併交渉によって社会的に最適な公共財の供給がなされる可能性があることが明らかにされている。現在この地域間の合併交渉が行われることを予見し得ない特定利益団体の下での合併交渉が行われるケースの分析も完成し、しかるべき学術雑誌を投稿先として模索中であり、英文の学術論文"Delegation of policy tasks from the politician to the bureaucrat"も現在査読付学術雑誌の投稿先を模索中である。
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