研究課題
第一の検証は、「ある自治体が公共事業を増額させた場合に、隣接した自治体の公共事業は増額されるのか、あるいは抑制される傾向にあるのか」である。このような問題を実証的に解明することは容易ではない。なぜなら、データ上は隣接した自治体の公共事業が増加したとしても、空間的相関の問題から、隣接した自治体の増額という意思決定は何らかの戦略的な判断に起因するのかどうかは容易に識別することで出来ないからである。そこで、合併団体と未合併団体の2つのグループに着目した。合併団体はさまざまな財政支援で公共事業を増額させているが、合併進捗率の高い地域とそうでない地域において、未合併団体の公共事業の変化に差異があるのかどうかを検証した。結果からは、合併進捗率が高い県の未合併団体ほど、公共事業を増額させていることが明らかになった。よって、合併推進策は未合併団体の意思決定にも影響を及ぼしたという意味で、「財政的外部性」がある。さらに、第二の検証は、「情報開示に積極的な自治体と積極的でない自治体が存在するが、その差異はどのようなメカニズムが機能した結果なのか」である。結果からは、住民によるガバナンスが機能しているというよりは、もともと公共事業に積極的な自治体において情報開示にも積極的であることが明らかとなった。それらの公共事業が住民にとって本当に必要なものであるのか、あるいは、公共事業を確保するための宣伝のための情報開示なのかを見極める必要があるだろう。これらの実証的結果をもとに、今後、公共部門のガバナンスに関する提言を取りまとめる。
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Fiscal Reconstruction in Japan: Fiscal Decentralization and Reform of Intergovernmental Relations, ESRI International Collaboration Projects 2006 February,2007
ページ: 109-161
ページ: 193-235