本研究は、長期的な製品市場の進化過程の中でも、需要の伸びが停滞もしくは衰退した状態から、何らかの作用により、再び成長の軌道に乗る現象、すなわち"再活性化現象"に注目している。 まずイノベーションと市場の再活性化がどのように関わりうるのかなどを考察する上での素材を収集し、再活性化に関する視座の構築に向けた検討を行った。視座の構築にあたり、企業と顧客との間におけるタテの相互作用の中でも、製品市場が再活性化する局面に焦点を当てた働きかけとして、4つの再活性化戦略を体系化した。この再活性化戦略は、企業が展開する製品が現製品〔若干の改良を施したモノを含む〕か新製品か、展開する市場領域〔セグメント、市場分野〕が既存の領域か新規の領域かという切り軸によって考え出されたものである。 次に、参入企業群が何を訴求の焦点として市場に働きかけているのか〔同じ焦点か異なる焦点か〕、及び参入企業群が製品展開している市場領域が同じものか異なるものかという切り軸によって、ヨコの相互作用の4態を導出した。そして、タテとヨコの相互作用の兼ね合いを主軸に、視座を構築した。本研究では、数量と金額からなる出荷データからみた製品市場の推移を追跡することによって、再活性化現象の視認を図った。そして、次のような条件を同時に満たす製品市場を、再活性化を遂げた製品市場と定めた。 1.起点以前の対前年成長率が、4年以上にわたり、連続して実質経済成長率以下のもの 2.起点以後の対前年成長率が、4年以上にわたり、連続して実質経済成長率を上回るもの 以上で定めた条件を基に、1990年代に起点を有するマシニングセンタ市場を取り上げ、その再活性化プロセスの解明に臨んだ。この市場では、既存の多焦点の組み合わせと、各焦点の属性値の差をめぐる鬩ぎ合いが織り成されて、各企業発のイノベーションが強化されて再活性化へと結実した。
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