本研究では長期的な製品市場の進化過程の中でも、需要の伸びが停滞もしくは衰退した状態から、何らかの要因が作用したことをキッカケに、再成長の軌道に乗る再活性化現象に注目している。 まず出荷データからみた製品市場の推移を追跡することにより、再活性化市場の判定を図った。企業におけるV字回復の条件を参照に、次のような条件を満たす製品市場、即ち再活性化市場を探索した。 (1) 起点以前の対前年成長率が、4年以上に亙って実質経済成長率以下のもの (2) 起点以後の成長率が、4年以上に亙って実質経済成長率を上回るもの その結果、再活性化の起点となった年代(70年代・80年代・90年代)を問わず、3%強を満たない程度ではあるが、条件を満たす再活性化市場が存在することを確認した。 そして再活性化市場で取引が織り成されている製品カテゴリーが消費財と生産財のどちらに属しているのかを区分けし、その傾向を探った。これにより再活性要因を明らかにするとともに、再活性化メカニズムに関する仮説の導出を試みた。 消費財に属する再活性化市場に関しては、在来企業群が直接制御することの難しい外的要因を上手く活用した企業行動を織り成すことにより、再活性化に結実させていることが明らかとなった。それは特定企業だけではなく、在来企業群が挙って展開している。また生産財に属する再活性化市場に関しても、在来企業群では直接制御することのできない外部要因に多くの影響を受けていることが明らかとなった。これらの外的要因の影響により、再活性化市場の需要が実質経済成長率よりも大きくぶれ、結果として再活性化市場として判定されたものと考えられる。つまり生産財に属する再活性化市場は、在来企業群による行動も展開されているが、その行動だけで停滞・衰退から再成長に転じるという再活性化を説明できるとは言い切れないと考えられる。
|