平成19年度は昨年度の成果を具体的な形にしていく作業をおこなうことになった。当初のデザイン組織におけるイメージや知識の共有・相互作用という考え方は、企業レベル・組織レベルでの大きな世界観の共有、「デザイン・パラダイム」という形で概念化することにし、これにより議論がわかりやすく、またその共有プロセスも具体的なイメージをもって整理することができるようになった。 フィールド調査では、当初のプランにあげられていた、九州の鉄道会社のインタビュー、および九州地方における陶磁器の窯元へのインタビューをすることができた。この2つのリサーチサイトが加わることで、当初のアパレル企業、パソコンメーカー、デザイン研究所のケースと比較分析を行い、理論に幅広い実証事例を加えることができた。鉄道会社は外部デザイナーとの協働、内部組織とのコンフリクトの調整といった、興味深いトピックについて事例を得ることができた。陶磁器の窯元についてはそれぞれ独自性を模索しながらも、有田・伊万里地域という大きな「デザイン・パラダイム」のもとで、窯元同士がその産地らしさを守っているという、興味深い事実が明らかになった。 そしてその事例をふまえて理論化した成果を、日本経営学会関西部会11月例会において、昨年度に引き続いて学会発表を行った。当初のデザイン・パラダイムとそのマネジメントという視点は高い評価を受けたが、リサーチサイトの比較に関しては多くの議論があり、比較する視点を整理することで、より理論が精緻化するという議論につながった。そのアドバイスをふまえて、まもなく論文を雑誌(日本経営学会誌)に投稿する予定である。また来年度の9月にはふたたび学会発表(日本経営学会全国大会)をおこなうことが決まった。19年度は理論的にも事例調査的にもその深みを増すよい機会となり、有意義な研究を行うことができた。
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