地域固有の経営資源すなわち "地域資源" の連携によって地域独自の魅力を最大限に活かした持続可能なまちづくりの可能性を前年度に引き続き考察した。これまでの地域連携は、たとえば地域集積などと呼ばれ、生産が集約化され物流や情報等が効率化されたり、人材・設備・ノウハウ等の資源が蓄積され生産性が向上、といったメリットを生む地理空間的な現象として知られてきた。しかしながら立地から生じる物理的な制約条件を超えることができないために、地方企業がその地域に立地しながら大都市圏に立地するのと同じかそれ以上の強みを発揮できるような方策を提供することはなかった。 そこで地理的距離のへだたりが高付加価値を創出するような地域連携ネットワーク構造の導出による仮想的な付加価値創出ネットワークを提案した。そして仮想的空間内に緊密な集積構造を生成し、そこから付加価値がうまれると考えた。この集積構造を構成する要素に、距離と時間から成る空間のへだたりと、企業活動の源泉としての経営資源のへだたり、の2つを挙げた。これらの要素から最適集積構造を構築することができれば、仮想地域集積が付加価値を創出し、単なる立地戦略や従来型の地理的な地域集積よりも優位性を発揮することにつながると考えている。 特に定性的な経営資源は、それらが企業に明示的に認識され、比較可能な変数に置き換えられるとともに、最適な地域連携に向けたモデリングやシミュレーションといった計算論的アプローチが適用されることで、仮想地域集積構造が見出されることを明らかにし、地域活性化に一石を投じる理論を展開したものである。
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