2年間の研究過程のうち1年目にあたる本年は、当研究課題に関する先行研究のレビュー、および国内外におけるインタビュー調査を中心に、ほぼ予定通りに研究活動を遂行した。 まず先行研究のレビューに関しては、本研究課題が広節な理論領域に関係していることや、欧米を中心に研究蓄積が増大しているごとから、当初は特定の領域に偏ることなく様々な先行研究を渉猟した。 先行研究のレビューから導き出された研究上の課題を述べると以下の通りである。第1に、知識フローにはヒトの存在が大きく介在しているが、既存研究では人的資源と知識フローに焦点をあてた研究は極めて少ない。第2に、サービスの業種に焦点をあてた実証研究も極めて少ないという点がある。第3に、こうした研究上の課題を解決するために参考となりうるのが、組織と技能(スキル)に関する諸研究であるという点である。その後の文献レビューにおいては、こうした点を鑑みながら、対象領域の絞り込みを行った(これらの導出は、2006年9月にコペンハーゲンで行った海外研究者との情報交換が非常に参考となった)。 次にインタビュー調査に関しては、2006年8月にシンガポールおよびバンコク(タイ)を訪れ、日本企業の現地法人(小売企業、電機企業)に対するインタビュー調査を実施した。そこでは、特に、多国籍企業内でのベスト・プラクティス活動に関する実施状況、促進・阻害要因などについて、海外子会社の観点から調査を行うことができた。これらの海外子会社は、準備段階より日本本社に対してインタビューを実施してきた企業であるが、本社に対する調査も続行している。 また、2007年3月に中国とロンドン(イギリス)にて、小売企業、金融企業、電機企業に対してほぼ同じ内容の調査を行うことができた。これらのインタビュー調査の結果については、次年度に学会で発表を行い、その後学術雑誌に投稿する予定である。
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