本研究の課題は、「現代文明の形成に際して経営学が果たしてきた役割」を検討することであり、そのことを通じて「新たな文明の形成に向けて経営学果たしうる役割」を考察する手がかりを得ること目指している。そのために本研究では、経営学の主潮流を経営(組織)現象の真理を探究する「科学としての経営学」を捉え、経営学の史的展開過程に潜む問題性を明らかにするという経営学説史的な接近を採用した。 本研究課題を遂行するために、「科学としての経営学」としてF. W. テイラーの科学的管理やサイモン理論を取り上げてきた。また、こうした主張流を批判する視角としてG. E. メイヨーやM. P. フォレットを取り上げてきた。その過程で明らかになったことは、第1に「科学としての経営学」は組織目的の効率的な達成を志向するあまり、組織体に潜在するその他の多様な意味(自然的、社会的あるいは人間的)を看過ないし軽視することで、「閉じられた人間協働」化を促進したことであり第2にその帰結として、自然的意味の軽視が自然環境破壊を、社会的意味の軽視が文化多元性の問題を、あるいは人間的意味の軽視が人間性の危機の問題を、惹起してきたことである. 「科学としての経営学」の基本問題は、組織の意味の諸他の意味に対する優越とそれに伴う多様な意味の間での調和の破れにある.経営学の主張流が孕んでいるこうした課題に応えるために、ここに、「新たな価値の創造」を中核に据えるC. I. バーナードの創造的管理論の現代的意義を見いだした。また、そのより具体的な展開のひとつの可能性として「環境経営論Environmental Management」の構想を報告した。 今後の研究は、バーナード理論をたたき台としてより具体的な展開の模索である。
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