本年度の研究実施計画に対して、進捗状況と到達点を以下にまとめる。 1.学習・組織能力の形成に関する既存の研究成果の整理 本年度の第一の計画は、アライアンスの内部的学習メカニズムに関する先行研究のレビューと整理を行うことであった。資源・能力アプローチや能力構築理論によると、外部組織から資源を取り入れる場合、自社には「自前主義と外部依存のジレンマ」が存在する。アライアンスにおけるノウハウの移転が効率的であっても、相手に依存すると深い吸収能力は身につかない。つまり、アライアンスによって能力を形成する際、ある程度の自律性を保つことがジレンマの解消につながる。理論の整理により、資源の特殊性や交渉のパターン、組織間の権力構造などは、アライアンス個別企業の能力構築の成果に影響を与えることが明らかになった。 2.組織間インタラクションによる資源内部化の状況把握 聞き取り調査を通じて、アライアンスにおける組織間インタラクションの実態を捉えた。調査の対象は、松下電器と富士通との合弁会社PFU社や、PFU社の元技術部長、松下半導体社の元技術部長、JETRO等であった。 調査によると、アライアンスから資源内部化を行う要因として、組織間の要因と、組織内部の要因に分けることができる。組織間の要因は組織間の信頼やトップのリーダーシップ、取引上の互恵性などが挙げられる。組織内部の要因については、吸収能力、既存資源との結合能力、モチベーションなどを考慮する必要がある。 3.資源転用メカニズムに関する要因調査 聞き取り調査から得られた結果に基づき、来年度に向けてアンケートの必要性を再検討し、質問票を作成する。質問票は、資源転用メカニズムに関する要因について、アライアンスにおける学習効果の有無、企業の特徴や吸収能力、組織間のパワー構造などを中心に設計される予定である。
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