平成19年度の研究内容は、(1)企業の経営パラダイム転換への必要性認知と転換のタイミングの分析、(2)松下電器(以下、松下)を事例とする、資源や技術の内部化・転用メカニズムの分析などを予定していた。 具体的な内容は、主として以下の3点である。 第一に、上述した研究内容について、主に松下のパソコンの技術形成を中心にヒヤリング調査を行った。特に、資源や技術の内部化・転用メカニズムの分析について、調査によると、現在の松下のノートパソコン技術は日本IBMのOEM生産に携わった経験にまで遡ることができるが、アライアンスが解消されたあとの松下の技術自律化行動が現在の技術の確立を導いた。パソコン技術の確立に向けて、松下ではグループ会社との連携、技術者のモチベーションの維持、顧客に対応する研究開発体制などの組織的取組が見られる。その調査の成果は20年度にジャーナルに投稿し、また映像情報メディア学会年次大会(福岡工業大学:2008年8月27・29日)で発表する予定である。 第二に、前年度から継続して、組織学習などに関する文献レビューを更に深めながら、アライアンスの学習メカニズムに関する事例の収集と分析を行った。アライアンスの交渉と学習メカニズムとを結びつけるために、資源ベース理論、ダイナミック・ケイパビリティ論などの理論をレビューした。 第三に、研究視野を広げるための関連研究を行った。(1)松下のアライアンス行動をまとめ、1つの企業の組織間関係戦略として総合的な視点から捉えてみた。松下の組織間関係マネジメントの特徴から、組織間関係による企業の戦略展開に関する研究を国立情報学研究所で発表した。発表を通じて、学習効果を測るための手法等について有益なフィードバックを得た。(2)産業クラスターにおける核機関のコーディネート能力や、企業再生に関する資源の再編成メカニズムなどの関連研究により、資源の内部化・転用メカニズムについての観察を深めた。 以上の内容を踏まえ、最終年度においては、松下の事例をまとめながら、アライアンスを分析する理論的な枠組みについて精緻化していく。
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