研究課題
米国では環境規制の導入が見送られた後、研究開発活動が一時下火となり、日本と比較して研究開発ネットワークの形成が遅れた。また環境規制の導入を決定した欧州においては、大学と民間企業が互いに独立した形でネットワークを形成し、効果的な産学官連携がなかなか進まなかった。研究開発ネットワークの構造と機能は、米国と欧州の鉛フリーはんだの市場化とその電気電子製品への導入の実績に影響を与え、鉛フリーはんだの早期の実用化を阻害する要因として働いた。ネットワークの構造をみれば、欧州では域内の環境規制に対しては合意形成が行われたのと対照的に、統一的な産業政策の形成は進まず、技術開発において産学官連携を促進するためのプロジェクトの実施が遅れた。一方米国は、欧州における環境規制の導入と日本における鉛フリーはんだの技術開発及び実用化の状況に影響を受けて、その後は急速に産学官の研究開発ネットワークへの参加が増えつつあるものの、日本のネットワーク構造ほどの密度には達していない。このようなネットワーク構造の差異は、両地域の鉛フリーはんだの技術変化と産業への導入に大きな影響を及ぼしたことが考えられる。日本においては、地球環境問題のような社会的課題に対して、大学研究者が中立的な学術的立場から新しい研究アジェンダを提案し、産学官が連携して研究開発ネットワークを形成しながら技術開発を進めたことは、技術の民生利用と開発速度を加速する上で重要な役割を果たしたと評価できる。米国及び欧州においては、社会的課題を先取りして積極的に連携を進める大学研究者の調整機能は顕在化されることはなく、研究開発ネットワークの形成は遅れ、もしくは分断されて、技術開発が遅れた可能性が高い。さらに、日本の研究開発ネットワークが、技術評価の統一化やインターフェースの標準化を通じて世界の環境規制に関する制度設定に貢献したことは高く評価できる。
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Proceedings of the Atlanta Conference on Science, Technology, and Innovation Policy 2007: Challenges and Opportunities for Innovation in the Changing Global Economy, Piscataway, NJ: Institute of Electrical and Electronics Engineers (IEEE) (掲載確定)
Journal of Industrial Ecology 11(4)
ページ: 117-139
Abstract Book of the 4th International Conference of the International Society for Industrial Ecology: Industrial Ecology for a Sustainable future
ページ: 353
http://ilab.k.u-tokyo.ac.jp/~yarime/top.html