研究概要 |
本年度は,研究の初年度に当たるため,探索的な実態調査を重点的に行うとともに,既存研究のサーベイを実施した。 第一の実態調査では,二つの研究を行った。一つ目は,公表資料による需給調整組織の把握を目的として,多数の新聞記事・雑誌資料を購入・複写し,企業の需給調整組織の構造と行動に関する実態の整理を実施した。分析に用いた資料は,主に新聞(日経MJ・日経産業新聞),雑誌(月間ロジスティクス・ビジネス,日経情報ストラテジー,ロジスティクス・システム)である。二つ目は,インタビューを通して,消費財における需給調整行動の事例を収集した。具体的には,物流業界の実態に詳しい複数のコンサルタントに情報提供を求めたほか,企業の需給調整部門の担当者にもインタビューし,実態の把握に努めた。 第二の理論研究のサーベイ調査では,主に需給調整行動に関する文献調査を実施した。今年度はサプライチェーンにおける国内外の文献をサーベイし,サプライチェーン・マネジメントにおける需給調整に関する新たな視点の探索に努めた。 こうした研究の結果,次のような需給調整組織の構造的・行動的特徴を把握した。すなわち,需給調整部門は,外資系の企業,もしくは垂直統合の進んだ企業において名称の違いこそあれども,独立した組織として存在する傾向にあると考えられる。少数のサンプルではあるが,インタビューの結果,需給調整組織が存在する企業は,(1)概ねプル型のマーケティングを強化しており,(2)季節要因等により激しい需要変動に直面するといった特徴を有しており,いずれにしても過剰在庫・機会損失リスクが重くのしかかっている企業であることを把握した。
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