本年度は研究計画の最終年度にあたるため、主にアンケート調査の実施に向けた準備を行った。具体的には、質問票を作成するための事例研究や理論的背景の整理、サンプリングを実施するためのデータベースづくり、質問票項目を作成するための文献サーベイや既存調査の確認、質問票で使用する尺度開発などを実施するとともに、アルバイトの助けを借りて袋詰め・郵送作業などを効率的に実施した。その結果、以下の二つの成果を上げることが出来た。 第一は質問票作成にむけた理論的背景の整理を通して、流通経路内での需要管理能力と需給調整行動の関係を明確にしたことである。需給調整組織の行動は各企業の流通経路における需要管理能力に大きく影響を受ける。そのため、既存研究にもとついて商品別・企業別の流通経路における需要管理能力の特性について検討を重ねた。この分析の結果、本研究で調査対象となる業界を特定することができただけでなく、その成果の一部を日本経営システム学会において報告することができた。 第二は需給調整組織の構造と行動について質問票調査を実施できたことである。既存研究では、環境不確実性の高い状況において需要管理能力と機動生産能力の双方が高ければSCM成果が高いという主張がなされていた。本調査は、こうした既存研究をベースにしつつ、本研究の出発点となった食品業界の事例を念頭に置き、需給調整組織そのものの行動特性とその意義を明らかにしようとした。調査結果は現時点では出そろっていないが、可及的速やかに「山口経済学雑誌」等に掲載する予定である。
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