研究概要 |
本年度は、規制緩和時代の保険業の統合と収れんという観点から、以下4点に焦点を絞り研究を行った。第一に、生命保険業と損害保険業の収れんに関する実証的検討である。同じ保険業といえども、生命保険業と損害保険業は別個の産業として発展してきた。ところが、1996年10月、子会社方式での生損の相互参入が実現したので、このような環境変化が、両業界の産業構造にどのような変化をもたらしたかを実証的に検証した(柳瀬・石坂,2006)。第二に、わが国同様、1990年代以降、保険業の規制緩和が進展してきた韓国との比較を行うべく、韓国の生命保険業におけるバンカシュランスの実態調査を行った(尹・柳瀬,2006)。韓国のバンカシュランスはわが国とほぼ時期を同じくして進展しているが、金融当局による厳格なリーダーシップという点では、わが国のそれよりも強いものがある。そうした規制当局の姿勢の相違が、銀行と保険の流通面での収れんにどのような影響を与えうるかを検証するための予備的考察を行った。第三に、わが国のバンカシュランス、とりわけ銀行窓販に関して、銀行と保険会社それぞれにどのような影響を与えたかという点を、米国での同様の問題意識に基づく研究手法を援用することによって、実証的に検討した。すなわち、1990年代後半以降、段階的に進展してきたわが国の銀行窓販が、銀行あるいは保険会社のステークホルダー、とりわけ株主の富を増やす方向で評価されたのか、あるいは減らす方向で評価されたのかを、イベントスタディーによって検証した(柳瀬,2006)。第四に、規制緩和後のわが国損害保険業の統合について実証的に検討した。すなわち、規制緩和後のわが国損害保険業の集中度と規模の経済性に関して、商品ライン別ならびに費用項目別にパネルデータ分析を行った。この研究成果は、『保険学雑誌』(日本保険学会)に投稿済みであり、現在、査読中である。
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