本年度(平成19年度)実施した研究は以下の3点である。第1に、昨年度に引き続き、規制緩和後の保険業における効率性ならびに生産性変化の計測を、より洗練された計測手法を用いて行った。具体的には、DEA(Data Envelopment Analysis)ならびにMalmquist Indexを用いて、生保業ならびに損保業における効率性生産性変化を計測する作業を行った。なお、年度末から次年度にかけて、さらに新たな計測手法として、確率的フロンティア関数を用いた分析も行う予定で準備を進めている。 第2に、計測された効率性や生産性変化が一体どのような要因によって生じているのという点を明らかにすべく、外部ガバナンス指標(例:株式会社と相互会社といった会社形態の相違や企業系列に所属しているか否か)や、内部ガバナンス指標(例:取締役会構成)を用いて、回帰分析を行った。本分析については、現在、海外学術誌に投稿中であり、査読結果待ちの状況にある。 第3に、新たな視点として、効率性や生産性変化と企業行動との関連性について、実証的な分析に着手した。これは、研究計画策定時点では、考慮されていなかったが、具体的研究を進めるなかでアイデアとして浮上してきたものである。そもそも、効率性や生産性変化は、いわば企業行動の「結果」であるが、そうした「結果」の前段階として、具体的な企業行動があることは容易に予想される。そこで、具体的な企業行動として「リスクテイク」の程度という指標を加えることにより、規制緩和後のデータを中心に検証を開始した。なお、この作業は次年度にまたぐものであり、最終的な結論は現時点では確認されていない。
|