本研究は、ブランド連想とブランド想起に関する2つの領域の研究成果をもとに、参入順位等の諸変数がブランド知識の構造および動態に及ぼす影響について検討するものである。ブランドの連想ネットワークモデルに「方向性」概念を導入し、ブランドから広がる連想(発散連想)だけでなく、想起手がかりとなる可能性の高い「利用目的・場面」「製品カテゴリ」「製品属性」といった事象からブランドに向かう連想(集束連想)に注目して連想の分析を行い、先発、後発各々の消費者知識(連想ネットワーク)について検討する。 本年度は研究計画に基づいて調査を実施。飲料銘柄(健康機能茶4銘柄、スポーツドリンク6銘柄)を対象とした連想データ(発散連想、集束連想)を測定した。 筆者がこれまで取り組んできた消費者知識に関する探索的研究においては、互いの連想内容に影響することを避けるため、発散連想と集束連想をそれぞれ異なる対象者(少サンプル)に対して別々に測定していたという点で、分析上限界があった。今回は、サンプル数を増やし(1000サンプル)、かつ連想の刺激ワードをランダム呈示することによって、同一サンプルに対してブランド名を起点とした連想(発散連想)とブランドに関連する刺激語を起点とした連想(集束連想)を同時に測定した。 ・1次調査刺激ワードの候補を挙げるためにブランド12銘柄(健康機能茶、脂肪燃焼系機能性飲料、水分補給系スポーツ飲料)の発散連想を測定。そこで挙がってきた連想反応の頻度の高い上位項目で、かつ連想の手がかりとなり得るような知識を刺激ワードとして選定。 ・2次調査(本調査)健康機能茶4銘柄、水分補給系スポーツ飲料6銘柄について、各ブランド名および(1)で選定した刺激ワードを呈示して連想を測定。自由連想の測定および「関連が強いと思われるワード」を選択肢から選ばせる再認による測定を両方実施した。 来年度は、これまでの研究成果に基づいて「参入順位」「発売からの期間」「広告量」といったブランドの諸変数とブランド連想の構造の関係について精緻に検討していく。
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