本研究は、ブランド連想とブランド想起に関する2つの領域の研究成果をもとに、参入順位等の諸変数が消費者知識の構造および動態に及ぼす影響について検討するものである。ブランドの連想ネットワークモデルに「方向性」概念を導入し、ブランドから広がる連想(発散連想)だけでなく、想起手がかりとなる可能性の高い「利用目的・場面」「製品カテゴリ」「製品属性」といった事象からブランドに向かう連想(集束連想)に注目して連想の分析を行い、先発、後発各々の消費者知識(連想ネットワーク)について検討する。 ●継続的なデータ収集の実施 本研究は3年に渡る継続研究であり、本年は3年目にあたる。本年度は過去2年間に取得した連想言語データを解析しつつ、その結果に基づいて昨年に引き続き健康機能茶飲料(特定保健用食品を取得した健康茶飲料)を対象として、調査設計の細部に若干の修正を加えた上で消費者の知識の測定を行った(※測定形式および手順は昨年度調査に準ずる)。 同カテゴリは比較的新しく、成長可能性の高い分野である。定番商品2ブランドが安定した業績を維持している一方で新製品が頻繁に導入されている。同分野を対象にデータを定期的に収集することによって、先発、後発ブランドに対する消費者知識の静態的分析のみならず、新たな後発の参入による知識構造の変化についての考察が可能になる。 ●これまでの研究成果についての発表 今年度は、これまでの調査結果(健康機能茶飲料の消費者知識の分析)に基づき、「参入順位」「出稿量」「製品の主要な属性を表すキーワードの想起可能性」といった変数に注目し、これらとブランドの想起可能性の関係について検討する内容の研究発表を行った(日本商業学会関東部会)。ケース数の少なさから、結果の一般化には限界があるが、その後も引き続きこれまでの実証研究で得たデータについてより精緻な分析を進めている。
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