会計認識概念の構造化という目的のもと、平成18年度は組織再編取引と経営者の意識の関係性について研究を進めた。経営者の会計認識概念を構造化するのに貢献するテーマである。 組織再編取引とは、ある会社(分割会社)の営業の一部または全部を他の会社(承継会社)に承継させ、対価としての株式を分割会社ないしは分割会社の株主が取得することをいう。本年度はこの取引のうち、グループ間組織再編に注目して調査を進めた。グループ間組織再編とは、異なる企業グループ間において共同して企業を設立したり、一方の企業グループへ不採算部門を譲渡したり、新規で企業を設立する再編形態を言う。分析の結果、グループ間組織再編において主に取り入れられる手法は、吸収分割、新設分割、共同新設分割という再編手法であることがわかった。さらに、これら手法を採用する場合に、何が最も考慮されているかを2000〜2004年度に行われた組織再編取引をもとに、検証した。検証の結果、共同新設分割を最初に考慮した後、他の二つに向かうというのが明らかとなった。この判断の決め手となるのが、株価であり、企業価値を高めるために組織再編取引を行うというのが、断片的にではあるが明らかとなった。更なる検証として、非適格組織再編取引を敢えて行う企業の動機を検証した。非適格組織再編は、再編取引によって、組織再編損益が計上されるため、税制上課税対象となる。それにもかかわらず、非適格組織再編取引を進めるのは、不採算部門の処理等を通じた収益力の回復を主要な目的としていたからであった。 ただ、当該研究は、依然としてその途上にあり、今後も更なる検証を重ねていく必要性が高い。
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