研究概要 |
自治体会計改革の契機について, 1つの特徴として, 自治体の長による強力なリーダーシップがあったことがあげられる。中には, 営利企業での勤務経験のある者や, あるいは公認会計士試験の受験をめざした経験のある者が自治体の長となり, 自治体会計の改革を強力に指示したという背景が伺える。もう1つ先駆的自治体に共通する特徴として, 近年の多くの自治体における会計改革の背景には自治体の財政危機があるといわれているが, 先駆的な自治体はむしろ財政の危機的な状況はなく, 財政危機の打開が動機とはなっていなかったことがあげられる。また, 誰に対する公開なのかという点では, 意見が分かれたが, 議会あるいは市民一般という意見が比較的多かった。ただし, 議会に対する公開であっても市民一般に対する公開であっても, 会計情報は多くの資料のなかの1つに過ぎず, 会計情報が取り立てて注目されることはないようである。先駆的な自治体において企業会計手法を導入することによって, 自治体経営にどのような変化が生じたかという点について, 際立った変化を見出すことはできなかった。担当部署の職員は会計改革に積極的であっても, それが他の部署の職員にまで大きな変化を及ぼしたとか, あるいは市民(や県民)の関心をひきつけたといった事例は見られなかった。なかには担当部署の職員のコスト意識の改善に役立っているというところもあった。
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