以前にも増して企業等に対して透明性が求められる時代の中で、透明性を高めるために必要とされる「見える化」によるエンパワーメントを考察した。まず、「見える化」自体が組織成員個人の能動性や積極性をどのように、そしてどのプロセス(「問題発見→知らせる→問題解決」)まで引き出すことに優れているかを示し、問題点を指摘した。次に、問題点である問題解決場面でのコミュニケーション促進の仕組みの鍵をコミュニケーションの見える化に求め、コーチングとオフサイドミーティングという2つの考え方・方法を用いて、それぞれのコミュニケーションの見える化の仕組みを検討した。 以上の考察を通じて、まず、見える化だけでは、見える化のプロセスの最終段階の問題解決の場面へ各組織成員を向かわせることはできても、その後の問題解決を促進させることはできないことを明らかにした。次に、コーチングとオフサイドミーティングによって、目には見ることはできないが、各組織成員の心の中に「同じ想い」や「相手を受け入れ心を開くことの喜び」を見えるようにする、あるいは持たせるようにするという「コミュニケーションの見える化」が、組織成員に仲間意識を持たせ相手を信頼し助け合い協力させ、問題解決の場面でのコミュニケーションを促進させることを明らかにした。つまり、コミュニケーションの見える化を行うことで、見える化によるエンパワーメントは補完され、「見える化」の効果を、見える化の全てのプロセスで発揮できるようになるのである。最後に、現場のエンパワーのために会計時報によって現場を写像するのではなく、「見える化」で作り出された「見えること」をそのまま伝えることや、「共感できる想い・人との繋がりの意識」を各組織成員の心の中に持たせるような「コミュニケーションの見える化」を促進させる活用の仕方を考えるべきであるというエンパワーメント型会計|官報の方向性を明示した。
|