本研究の目的は、会計のグローバル・スタンダードである国際会計基準(IAS)/国際財務報告基準(IFRS)が国際的資本市場においていかに受容されているかを、会計制度・実務のレベルから総合的・体系的に分析することである。本年度は、欧州連合(EU)におけるIFRS受容の歴史的展開を、国際的環境の変化、受容の積極性の変化、受容の理由に焦点をあて、会計基準設定主体および会計基準の間の調整問題として検討した。その成果は、具体的に以下の点に要約できる。 1、1960年代後半のイギリスのIASへの積極的対応は、当時のイギリス経済の停滞と欧州経済共同体(EEC)経済の台頭、さらにはEECにおける会社法調和化の動きに動機づけられた。 2、1980年代半ばの証券の多国間公募の増加を背景としてアメリカがIASの設定に積極的に関与し始め、2005年のEUのIFRS受容を背景としてアメリカのIFRS受容への態度が柔軟化し、コンバージェンス・プロジェクトが進展した。 3、2005年のEU資本市場におけるIFRS採用を背景として、会計基準設定主体間の交渉においても国際的な会計基準設定においても、EUが大きな発言権を有することになった。 4、EUのIFRS受容は、証券監督者のみならず銀行・保険監督者などの関連諸機関が相互連携し、経済制度全体にわたって行われている。 本年度は、上記項目に関して関連諸機関における調査や識者との意見交換を行ったほか、研究会や勉強会等で5回にわたって報告した。また、(3)に関する論文を執筆した(拙稿「金融商品会計」『現代会計学と会計ビックバン』森山書店、近刊)。
|