本研究の目的は、会計のグローバル・スタンダードである国際会計基準(IAS)/国際財務報告基準(IFRS)が国際的資本市場においていかに受容されているかを、会計制度・実務のレベルから総合的・体系的に分析することである。本年度は、主として、欧州連合(EU)および米国におけるIAS/IFRS受容の歴史的展開を、近年の両者の協力関係に焦点を当てながら分析した。また、オーストラリア・ニュージーランド・シンガポール・香港に関してIAS/IFRSの受容方法を検討した。その成果は、具体的に以下の点に要約できる。 1、国際会計基準審議会(IASB)を通じた会計基準の国際的コンバージェンスは、証券監督者のみならず銀行・保険監督者などの関連諸機関が相互連携し、IASB=G7体制の下で行われている。 2、近年、欧米の証券監督者が密接な協力体制を形成するなか、IASBと米国の会計基準設定主体が共同でコンバージェンス・プロジェクトを進めるなど、欧米主導のグローバル・スタンダード設定の傾向が一層見られるようになった。その一方で、会計基準設定におけるEUと米国の対立も顕著となっている。 3、現在100カ国以上の国々においてIFRSが採用されていると言われているが、実際にはIASBの作成したIAS/IFRSを全企業に対して完全に受け入れている国を見つけることは難しい。各国は対象となる企業や財務諸表を限定し、IFRSの基準の一部を除外したり、国内の基準として再発行したりして受容している。 2011年を目標とした日本基準とIFRSとのコンバージェンスが決定され、会計基準の国際的コンバージェンス研究の重要性はますます高まっているが、国際的展開が急速であることもあり、体系的研究はまだ少ない。その意味で、本研究は当該領域の研究の蓄積に貢献すると考えられる。
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