研究概要 |
本研究の目的は、会計情報の信頼性(reliability)を実証的に分析し、わが国会計制度の設計に資する素材を提供することである。これにあたり、1年目の平成18年度は、主に資産の時価測定の信頼性に焦点をあて、以下の研究を行った。 第1は、資産の時価測定に関する先行研究のレビュー、整理、検討である。時価の概念には公正価値、回収可能価額、剥奪価値などがあるが、これらに関する学説および実証研究をレビューした。 第2は、時価測定に関する会計制度の現状整理と検討を行った。対象は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、日本、国際会計基準であり、制度の状況とその背後にある論理(会計理論、および会計基準設定者の論理)を検討した。 第3は、日本企業における時価評価実務の実態を解明するために、実務担当者へインタビュー調査および財務データの収集を行った。インタビュー調査では、時価評価のプロセス、時価評価の信頼性および妥当性の評価方法、信頼性を担保するための取り組みなどを定性的調査法によって記述した。この成果の一部として、日本企業における時価評価実務を実証的に研究した論文「回収可能価額の測定に関する実証分析-2005年3月期の減損会計・早期適用企業を中心に」を執筆した(出版時期は平成19年4月である)。 第4は、会計基準設定プロセスにおけるコメントレターの収集を行った。具体的には、平成18年11月に、米国の財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board,401 Merritt 7,P.O.Box 5116,Norwalk, Connecticut,06856-5116)へ行き、時価測定に関する会計基準の設定プロセスで寄せられたコメントレターを収集した。なお、コメントレターは会計基準形成の論理や利害関係者の行動の論理を解明するうえで、次年度も引き続き活用する。
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