研究概要 |
本年度は,3年間の研究期間(平成18年度〜平成20年度)の1年度目である。 研究計画に従い,本年度は,まず,持分法投資(関連会社投資)の株価関連性に関して調査を実施した。 国際的には,JVや関連会社等,子会社以外の非連結企業についても追加的開示を行う動向にあるが,日本においては,現在のところ,追加的開示は実施されておらず,JVや関連会社に対して持分法が適用されるのみである。追加的開示以前に,そもそも,持分法に基づく会計情報が,日本の資本市場において,どのように評価されているのかを明らかにすべく,「関連会社株式」(貸借対照表における簿価情報)と「持分法による投資損益」(損益計算書における利益・損失情報)の株価関連性を調査した。 その結果,利益・損失情報の株価関連性が著しく弱いのとは対照的に,簿価情報の株価関連性が有意に強いことが明らかになった。このことは,財務諸表利用者が,持分法に基づく利益・損失情報に信頼を置いておらず,簿価情報に重点を置いた評価を行っていることを示している。 JVや関連会社の情報開示が十分ではないことに,この原因の一端があることは明らかである。財務諸表利用者は,現行財務報告制度の下,JVや関連会社の情報入手が困難である中,利益・損失情報よりは相対的に信頼できる,簿価情報に評価の重点を置かざるを得ない状況にあるものと解される。 かかる研究結果は,日本においても,JVや関連会社に関して追加的開示が必要であることを裏づける,証拠の1つとして位置づけられると思われる。
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