研究概要 |
本年度,次の研究を行った。 1連結財務諸表の有用性の検証 日本の企業グループが発する,連結財務諸表の有用性を検証する研究は蓄積されているが,一口に企業グループといっても,事業構造が複雑多岐に渡るところもあれば,事業構造が比較的単純なところもある。この研究では,公表財務データを用い,事業構造が複雑多岐に渡る企業グループほど,連結財務諸表の有用性が低く,セグメント情報等の補足的情報が提供されない限り,投資家は,正確な意思決定を下すことは難しいということを明らかにした。 2セグメントおよびSPEに対する情報需要 30名の証券アナリスト(株式および債券担当者双方を含む)に対する個別聞き取り調査を行い,財務諸表の専門的利用者として,セグメント情報およびSPCに関し,どのような情報を必要としているのかを把握した。まず,セグメント情報に関しては,事業分野が複雑多岐に渡るグループ企業ほど分析の手間を要し,とくに大規模非関連多角化企業に関しては一人で分析するのは不可能であり,業界の事情に詳しいアナリストの知識を持ち寄り,複数人で分析を行う傾向が強いことが明らかになった。一方,SPEの連結に関して,賛成と反対意見とに大きく分かれ,連結するにせよ,非連結とするにせよ,SPEの負債部分を明瞭に示す必要があることが明らかになった。 その他,本研究に関連する課題として,カンパニー制組織に関する研究を行った。なお,上記2については調査を終了したところであり,成果の発表は,来年度,行う予定である。
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