戦略的投資決定とその業績管理会計への影響に関する実態調査とそのモデル化について、まず当該分野の理論研究として、文献サーベイを行うとともに、整合性を切り口として近年の管理会計技法について検討した。また戦略的投資決定と業績管理会計に関する実態調査の第一段階として、日本国内において2社に対してフィールド調査を行った。それらの概要は以下の通りである。(1)近年の活動基準原価計算、経済付加価値、バランスト・スコアカードといった管理会計技法の登場は、整合性の観点から説明できる。ここで整合性とは、2つ以上の経営管理プロセスにおいて、各プロセスに対して有用な情報を提供し、かつ経営管理プロセス間で矛盾が生じない管理会計技法・情報のあり方をいい、経済付加価値とバランスト・スコアカードは投資決定から業績評価までを対象に整合性を保つことを可能にする。これは近年の管理会計技法のキーワードが整合性であることを示唆しており、戦略的投資決定と業績管理会計の関係についての切り口となる。(2)投資決定論研究は、フィールド調査をベースに徐々に蓄積がなされてきており、財務的な側面のみならず、投資決定に影響を与えうる変数の抽出が行われている。しかし、日本企業に対する調査は不十分であり、日本独特の要素が存在するのか否か、またより具体的には日本企業で回収期間法が選好される理由は何であるのかについて十分な検討はなされていない。(3)大型設備投資を行う企業に対してインタビュー調査を行い、設備投資管理に関する基礎データを得た。また、市場の変化が早い企業に対してin-depthケーススタディをはじめた。そして、戦略・投資決定と業績管理会計の関係について基礎データを得るために、その企業の全部門に対して現状の業績管理会計について聞き取りを行った。
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