研究概要 |
経済合理性, 組織的合理性, 政治的合理性といった複数の合理性から, 新日鉄の投資決定実践の分析を行い, その実践が全員参加型経営のもと理解の容易さという組織的合理性と経済合理性の調和の結果として割引回収期間法が利用されていることを明らかにし, それを学会報告するとともに, 論文にまとめ上げた。 次に, バッファロー株式会社において, 戦略的投資の1つとして新製品開発(NPD)を位置づけ, それと予算管理といった会計コントロールの関係についてフィールド調査を行った。そのなかで, バッファローにおいては, NPDと短期利益計画が一体となり展開されており, そして予算とロードマップ(RM)が相互に関係しながら, 各々の役割を果たしていることが明らかになった。NPDにおいて, 商品コンセプトの作り込み, 資源配分, 全社日標との調和が行われる「場」, 調整方法についても詳細な経験的データの蓄積を行った。その結果, 予算とRMの双方を利用することで, 環境への柔軟な対応が可能になるとともに, 自発的な学習が促進され, NPDという戦略的投資に影響を与えていることが示された。つまり, 戦略的投資は, その効果の不確実性から業績管理会計に対して, マイナスの影響を与え, 業績管理会計からみると戦略的投資を抑制することが指摘されてきたが, 競争環境の激しい業界においては, 逆にプラスに影響を与え, 会計コントロールによって戦略的投資が促進されていたのである。自発的学習が, タイトな会計コントロールから導き出されたものであるという事実は極めて重大なことであり, 予算管理研究の新たな一歩となるであろう。
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