本年度はディスクロージャーの精度がどのように決まるかを中心に実証的・分析的研究を行った。実証研究としては、ディスクロージャーの質を決める要因である内部統制体制や取締役会構造に着目した「IPO企業のコーポレート・ガバナンス構造の決定要因」を『経営分析研究』に公表した。さらにCSR活動がディスクロージャーの質に影響を及ぼしていることやその結果として企業のレピュテーションが上昇していることを検証した"The Effects and Determinants of Extensive Disclosure:Evidence from Japan"をCorporate Ownership & Contorolに公表した。これらは共にディスクロージャーの質についてどのような要因が影響を及ぼしているかについて明らかにしたという意味で貢献があると考えている。さらに、後者の研究ではディスクロージャーの効果と規定要因を同時に扱ったという点で、貢献があると考えている。 理論研究は、経営者がなぜディスクロージャーによって市場を誤導しようとするのかについて考察した。まず業績が悪いときでも良いシグナルを出しやすい会計システムの規定要因を考察した"The Interaction Between Aggressive Accounting System Choices and Hidden Actions"をAsia Pacifin Conference on International Accounting Issuesにて発表した。また、経営者が利益操作をし、かつその利益を信じさせる努力をする要因を「ノイズトレーダーリスクと会計政策の関連性について」にて考察し、ディスクロージャー研究学会にて発表した。共に昨今問題となっている粉飾決算に光を当てる研究であり、そのような行為を行う経営者の傾向を明らかにするという点で貢献できていると考えている。
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