本年は、まず経営者の裁量的情報開示に着目し、その要因について分析的手法を用いて検証した。その結果としてまず、ノイズトレーダーリスクの存在が経営者の裁量的情報開示である会計政策を誘発することを示した。また、内部統制体制をうまく構築していないならば裁量的情報開示が起きやすいと考えられるが、そのような内部統制体制を構築するのは、むしろ収益性を高めるような努力を行っている経営者である、ということを示した。また、これに関連し、監査法人の名声や内部統制体制構築についての研究中も進行中である。まず、被監査企業を監査する監査法人の名声が失われた場合、その企業の株価に影響があることを検証中であり、その結果の一部を発表した。また、内部統制体制構築に積極的な企業はどのような企業であるかについてサーベイ調査を利用した研究を進めており、その成果の一部を発表が認められた。 つぎにCSR活動とディスクロージャー戦略との間に関連があることを実証的並びに分析的に検証した。その結果、まず実証的研究としては、環境投資の公表は株式市場に負の影響があるものの、品質投資の公表は性の影響があることを発見した。また、啓発された投資家の存在が企業のディスクロージャーに影響を与えていることをモデルを用いて検証した。 制度とディスクロージャー戦略の関連としては、配当可能利益の評価と会計基準のコンバージェンスについて検討を行った。配当可能利益は他の資本項目と比較して低く評価されているが、それは配当政策と関連しているからである、という証拠を提示した。また、会計基準のコンバージェンスについては、国際財務報告基準を採用した方が有利になる条件を分析的に検討中であり、分析の途中経過を報告した。
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