本研究初年度にあたる平成18年度は、まず、(1)水防組織に関する先行研究を、社会学にかぎらず、学際的なかたちでフォローしながら、国土交通省の各種統計資料などにより、全国の水防管理団体数の変化、水防団員数の推移、水防団員の年齢構成、水防功労者への手当の現況、水防活動の出勤状況、などの各種のマクロなデータを整理した。そのうえで、(2)釧路市周辺を中心とする北海道東部での「水防」の動向について、資料収集をおこなった。さらに、(3)このような「水防」については、日本には、かつて受益者負担の原則のもとで、地域住民が負担金を拠出しあいながら「自治」的に運営される「水害予防組合」が多数存在していたが、都市化や治水技術の進展等をきっかけにして、次々と編成替えされていった。その中で、依然として、水害予防組合としての形態を保持しつっ水防に取り組んでいる3事例を選出し(月光川水害予防組合(山形県遊佐町)、神流川水害予防組合(埼玉県神川町)、長沼水害予防組合(千葉県成田市))、ヒアリング、ならびに資料収集をおこない、その活動の現状、課題、将来的な展望などについて分析した。また、防災教育という観点から、(4)DIG(災害イマジネーションゲーム)をはじめとした防災教育・安全教育の取組についても、江別市等において参与観察するとともに、地域防災とコミュニティに関するレクチャーの講師をつとめた。このこととの関わりで、防災教育で全国的に知られる優れた活動をおこなっている、徳島県美波町(旧由岐町)に赴き、町担当者、小学校での防災教育担当教員、等からヒアリングならびに資料収集をおこなった。(5)最後に、本研究が依拠する理論的な「視座」を練り上げるために、社会学的なリスク研究の動向を整理し、社会システム理論の観点から、こうした理論動向を、「危害の貧困化」の超克という考え方を軸にして、上記の地域防災のあり方に接続させてゆく道筋を探った(下記、業績一覧参照)。
|