本研究では、建設業などに従事する不安定就労層のなかでも、とくに若年層に焦点をあて、就労と生活実態を実証的に明らかにすることを目的としている。本年度は最終年度にあたり、これまでの研究のまとめと、その日本語および英語での発表を目指して研究活動を行った。 第一に、若年労働層や不安定就労、貧困に関する書籍や論文・資料の収集と、その読み込みを行った。イギリスやアメリカの若者問題に関する文献についても収集に努めた。第二に、ホームレスの人々や不安定就業の若者を支援するNPO関係者への聞き取り調査やイベントへの参加を行うことで、若年貧困層の就業の実態把握と諸政策に関する情報・データの収集を行った。これらの若年層と不安定就業に関する研究の成果は、国際学会にて2回の発表を行った。第三に、青森県出身で関東に在住している数名の若年層に対して、1時間程度の聞き取り調査を行った。正社員になりたくてもなれず、派遣業を続ける対象者が、一時的に実家に帰ったり、関東在住の青森の友人ネットワークを利用するなど、地域移動と生活についての知見を得、報告書を執筆した。また、青森の各種労働統計を収集・分析し、建設業の縮小と若年層の流出について、研究ノートにまとめた。第四に、日本の建設業の下層労働市場の変容に関する研究と、若年層の不安定就業に関する研究について2本の英語論文の執筆に努めたが、こちらはまだ完成に至っておらず、引き続き執筆予定である。本研究では、日本の就業構造が激変するなかで、若年層が多重の社会的排除の元にあること、家族や地元との関係が重要であること、地方にとっての建設業の縮小と派遣業の伸張について知見を得た。
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