本研究では、19世紀に世界各地から小笠原諸島に移住し近代日本国家=帝国が同諸島を占領する過程で帰化させられた人びと(以下、その子孫を含め先住移民と表記)が、国家=帝国がもたらす諸力と交渉しながらどのように生きぬいてきたのかを、歴史社会学的な手法により検討した。対象時期としては主に20世紀を扱い、具体的には、(1)20世紀前半に先住移民が培ってきた自律的な経済的・社会的・文化的諸実践の領域が切り縮められていくプロセス、(2)アジア太平洋戦争末期に「内地」への強制疎開の対象となった先住移民の諸経験、(3)戦後米軍占領下の父島に帰島を認められた先住移民をめぐる諸状況、について明らかにした。
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