研究課題
社会の開放性を、「様々なライフチャンスに対する社会階層的背景の影響が弱いこと」と操作的に定義して、以下のように実証研究を進めた。親階層と本人階層との関連すなわち社会移動に関しては、後発の産業社会である日本と韓国とを比較して、両者の社会移動パターンは必ずしも似ているわけではなく、また時代が下るにつれ(産業化が進むにつれ)移動パターンの収敏がみられるといったこともないことが明らかにされた。その成果は論文『後発産業社会における社会移動の趨勢とパターン』に収められている。似た階層的地位の男女は結びつきやすいのか(階層同類婚)、そうした同類婚の傾向は時代的に変化をしたのか、そして同類婚カップルのほうが離婚をしにくいのかといった家族次元における階層問題についても分析をおこなった。結果、階層同類婚の傾向は、親職業、本人学歴のいずれで測ってもみられるものであること、長期的にはそれらの同類婚傾向は弱まってきたこと、日本と韓国では学歴同類婚の趨勢が異なること(日本は緩やかな減少、韓国は増加)、同類婚の夫婦の離婚リスクが特別に低いとは考えられないこと、などが見出された。そのほかに、韓国の研究者と共同で、日本と韓国での大きな学校制度改革が教育機会の階層間格差に与えるインパクトを分析した。日本における戦後直後の改革の平等化効果が発見されたが、韓国の諸政策についてはそれほど階層間不平等の縮小にはつながっていないようであった。これまでの社会階層論の趨勢・比較研究におけるベースラインだった産業化仮説、実証分析において定説となっていた収斂仮説、などの既存理論によっては説明できない結果が多くみられた。後発の産業社会までを視野に入れて展開するためには、新たな理論構築が必要になることが示唆されたといえる。
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Korean Journal of Sociology of Education 17巻1号
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社会学研究 81号(印刷中)
SSJデータアーカイブ リサーチペーパーシリーズ 36号
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SSJデータアーカイブ リサーチペーパーシリーズ 37号
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対等な夫婦は幸せか(永井暁子・松田茂樹編)(勁草書房)
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