昨年度までは、国内外でのキャプション入力について、基礎的な現状調査をおこないながら論文等を公表してきた。おもに焦点を当ててきたのは、速記システムや要約筆記ソフトの開発者、キャプション入力に関連した活動をおこなっているNPO等についてである。さらに具体的には、対象としてきた団体は、以下の3つの業界に分類することができるだろう。(A)パソコン要約筆記、(B)日本のキャプション入力をとらえる際、それぞれの業界がかかえる問題点ももちろんのこと、順)裁判所の速記、(C)テレビ字幕業界。「研究目的」に前述したように、(国際比較をも通じてにそれぞれ福祉事業、公的事業、民間事業にまたがるこれらの業界において、音声入力技術がどの程度実用化される見込みがあるのか、ということも重要な論点となる。 2006年に発表した論文では、ユニバーサルテザイン一般におけるテキストテータの可能性を追求している.この点をさらに追及すべき論点である.また、今年度はとくに、調査の方法論についても翻訳書の出版などをおこなう準備をした。上記以外に、今年度の研究実施を通して追補したのは次のことである。来年度の課題として、前述の3つの業界、すなわち(A)パソコン要約筆記、(B)裁判所の速記、(C)テレビ字幕業界に加えて、新しく(D)として、ネット上のキャプション入力コミュニティにも注目する必要があるということだ。ボランティアベースでおこなわれることも、報酬をともなうこともあるが、これらの様相は日本のキャプション入力の現状を反映していると考えられる。
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