テーマ「社会的企業による持続可能なまちづくりの国際比較」の1年目である今年は、イギリスを中心として旺盛な企業家精神と強い社会的使命をかかげる「社会的企業」が (1)具体的にどのような地域問題に対してどのような活動をしているのか(コミュニティ・マネジメント)、 (2)またその過程で、行政や企業とどのようなパートナーシップを形成しているのか(コミュティガバナンス)、 (3)そうした社会的企業の活動が、どのような人々に対して影響を与えているのか(コミュニティ・エンパワーメント)、という3点を中心にして検討した。 まず9月と3月に社会的企業の中でも高い自立性を目指す「まちづくりトラスト(Development Trust)」の中から4団体を選択しヒアリシグ調査を実施すると同時に、そのネットワーク組織である「まちづくりトラスト協会」の全国大会(バーミンガム)に9月に参加し、最近の動向と抱えている問題点について資料収集およびヒアリングを行った。 その結果、いまのところ以下のような知見と得ることができた。 第1に、自治体のパートナーシップ政策が地域レベルで実際に動きだしたことにより、また政府の社会的企業支援策によって、まちづくりトラストの活動を支援する資金や制度が整いつつある点 第2に、まちづくりトラストが自立的な組織運営のために、自治体が所有している土地や建物などのアゼットを所有し、運営するというアセットマネジメントを非常に重視ている点 第3に、まちつぐりトラストの活動が拡大する一方で、非営利と営利のバランスが崩れたり、自治体との対等な関係が維持できなくなっている団体がみられるようになっている点 残された課題は、まちでうくりトラストの活動が、地域のどのような住民ネットワークを碁盤にしたものなのか、そしてどのようなエンパワーメントを可能にしているのか、事例の詳細な分析が今後の課題である。 これらのことにより、イギリスにおいて持続可能なまちづくりを可能にする諸要因の内実に迫りたい。
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