本研究テーマである「社会的企業による持続可能なまちづくりの国際比較」を実施するために、これまでイギリス、イタリアにおいて持続可能なまちづくりを可能にする社会的企業の社会調査を実施してきた。また日本においても横浜、静岡、東京等において社会的企業の実態を調査し、ガバナンスのメカニズムについて以下の点について、考察を進めてきた。(1)社会的企業の活動を支える人的なネットワークを基盤(2)社会的企業の組織的運営、(3)各団体間のネットワーキング、(4)地方自治の支援策。 今年度はまとめの年度として、コミュニティ・ガバナンスに関する理論的考察及び、書籍の出版などを中心に成果のまとめを行い、外部評価を得ることを目的にした。とりわけ英文の論文の作成により、日本国内にとどまらず、ガバナンスの国際比較をまとめた。 イギリス型のガバナンスでは、「まちづくり事業体」(development trust)と呼ばれる社会的企業がアセット運営を中心に、住宅供給や雇用創出などを進め、そこに地方自治体や地域諸主体との「パートナーシップ」が非常に大きな影響を与えていること、イタリア型のガバナンスでは地方自治体への権限委譲が非常に進んでおり、「社会的協同組合」(social cooperative)と呼ばれる社会的企業を中心に、障害者雇用、衰退地域の生などを地域ネットワークを利用しながら推し進めていた。そこでは中間支援組織の役割が重要となることを明らかにした。 これに対して日本では、地縁に根付いたソーシャルキャピタルの構築は盛んであるが、それが行政から自発的にガバナンスを形成することは難しく、むしろビジネス的手法を取り入れたまちづくりNPOの中からコミュニティを再生させる動きがみられた。
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