本年度は、日本を含めた、韓国、台湾、ドイツにおいて、日本人の戦争体験を描いた日本のアニメーションやマンガ作品が、読者レベルでどのように体験され読解されているのかを、オーディエンス調査によって明らかにするという計画のもと、研究を進めた。 上記計画に基づき、韓国・台湾・ドイツで調査を行なうとともに、フランス・オーストラリアでも補助的な調査を行なう機会を得た。大学生および卒業生を中心に調査を行い、現地における日本マンガの受容度合いおよび日本表象の様相によって、作品解釈が左右されるという現状が明らかになった。特に、その国・地域において、どのような種類の日本マンガが、どのような社会的属性の人々に受け入れられ、かつ、論じられているかによって、作品解釈の広がりを左右しているようであった。 こうした成果の一部は、ドイツ・フランス・オーストラリアで開催されたシンポジウムで発表し、ディスカッションを通じて考察を深める手がかりを得た。また、現地の研究者との交流も深めることができた。特に、フランスのパリ政治学院で企画されている「マンガ・ネットワーク」にも参加することができ、今年度、2度の発表を行なう機会を得ている。ドイツ、ライプチヒ大学で行なわれたシンポジウムでの発表は、論集に収録され、来年度を目処に出版される予定である。また、国内においても、成果を学会誌や論集の一部として、発表することができた。 来年度は、今年度の調査結果を踏まえて、各国、地域における評論や日本研究における作品の評価にも考慮しつつ、作品の各国・地域における文化・社会的位置づけを明らかにすることによって、研究内容を深めていくこととしたい。
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