今年度は、政府が主催する災害に関わる民間団体(NPO等)の検討会の中で、民間団体側が積極的に独自の課題を設定し(広域連携や安全衛生等)独自の勉強会を設置・運営していった動きに着目し、当初予定していた2つの研究課題のうち、(1)「市民活動団体・地縁組織による諸活動の把握」に重点を置いて研究を進めた。 まず、実態調査としては、上記検討会の一委員として、巨大災害時の広域連携体制の構築に関する勉強会に参加し、そこでの課題や課題をめぐる議論について情報を収集した。 こうした広域連携の具体的な取組みが始まった背景には「個人ボランティアの殺到」から「組織間連携」のあり方が課題として浮上してきたことを示唆しており、今後は海外の先進事例も視野に入れた検討を進めていきたい。 また「近年の被災地における地縁組織及び市民活動団体の活動実態の事例調査」として、中越地震、新潟豪雨水害、雲仙普賢岳噴火災害後の対応について現地調査を実施した。今迄の研究からも、災害後の対応において、地元の地縁組織が重要な役割を果たすことを指摘してきたが、今年度は、将来の「減災」への寄与という観点から、地元組織と外部支援者との連携のあり方に焦点を当てて調査を実施してきた。その中で、中越地震後に始まった村おこし的なコミュニティビジネスの取組みにおいて、被災地域の生活・文化と、被災地外の市民団体が持ち込む新しい活動の仕組み・価値観とが接合し、"減災文化"につながる新たな実態が生成されつつある実態を確認できたことは大きな成果であった。次年度以降、文献調査も加えながら実態調査を継続していきたい。 また、文献調査としては、上記政府主催の検討会の関係者から、論文以外の文献情報の提供を受け、これまで十分に把握できていなかった阪神・淡路大震災以降12年間の災害NPOをめぐる動向・活動実態に関するレビューを完成させた(→研究成果)。
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