1.米国における司法解剖に関わる制度について 平成18年8月、米国にて、犯罪事件後の司法解剖に関わる制度とその運用についてヒアリング調査を行った。遺体の返却時期等の情報提供については、民間の被害者支援センターが捜査機関と連携しながら、遺族に伝えられ、解剖結果に関する開示については、捜査段階では困難だが、終了後開示がなされ、医学専門的な説明について、ホーム・ドクターがその役割を担っている等の状況が把握できた。一方で、遺体の修復や運搬等の費用については、遺族に申請により被害者補償法の範囲で実施されており、費用の限界については指摘されている状況がわかった。 2.死因をめぐる法制度と遺族ケアについて 平成19年3月、司法解剖をめぐる法制度および手続きの状況や遺族ケアについて調査を行い、遺体返却時期等の告知については、検視官が主体となりながらサポートされていることが把握できた。死因を特定するための検視法廷を含む、その後の制度に関する情報提供については、内務省および民間被害者支援機関(Victim Support)が、主体となって実施されていることがわかった。また、同じく検視法廷をもつシンガポールにおいても、遺族の参加保障、子どもを持つ家族のための待合室等ハード面での整備、法廷後の遺族ケア(自助グループの紹介)などが実施されている状況を把握することができた。 3.わが国における法医学の分野における遺族サポートについて 平成18年11月、日本犯罪学会において、司法解剖における遺族サポートについて報告を行い、法医学者、刑法学者と意見交換を行った。「愛する家族がなぜ亡くなったのか」という事実究明を切望する遺族に対して、捜査に支障のない範囲で、遺族に解剖結果を開示すべきという意見や、一定の説明や法制度について情報提供をできるコーディネータのような存在が必要ではないか等の意見が聞かれた。
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