本研究の二年目として、本年度は、法医学の分野において、被害者への支援、特に遺族ケアを行っている諸外国の取り組みについて文献の収集、調査、検討を行った。司法解剖における遺族ケアについては、グリーフ・カウンセリングが主流であり、医療機関での遺族対応の問題も含めて文献、資料収集を行った。 また、下記の諸外国において、文献の収集およびインタビューによる調査を行った。1)外傷体験を持ちやすい専門職(警察、消防、検視官など)へのメンタルケアと同時に、遺族ケアも行っているアメリカ合衆国の行政機関からインタビューを行った。2)「犯罪被害者庁」をもち、捜査段階で国選弁護人を被害者につけ、また司法解剖においては遺族に説明義務を持たせているスウェーデンでの取り組みについて調査を行った。3)検死および検死法廷(Coroner's Court)の制度が整っているオーストラリアビクトリア州において、検死事務所所属のカウンセラー、検死法廷での民間支援機関であるCourt Networkの責任者およびスタッフ、ボランティア、長期的な支援を行っている民間支援機関Compassionate Friendsのスタッフからインタビューによる調査を行った。 これらの研究結果は、第43日本犯罪学会で報告を行ったほか、第7回国際法医学シンポジウムにおいても、報告を行う予定である。また、日本における犯罪被害者支援政策は、犯罪被害者等基本法において整備されつつあるが、過渡期にある現在、これら研究成果をもとに、今後も本研究を発展的に継続する予定である。
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