平成19年度の研究は、おもに、課題研究を遂行する上で必要となる資料収集とその整理、そして研究成果の中間発表に重点をおいた。 日本原水爆被害者団体協議会(目本被団協)の事務局(東京)においては、昨年度に引き続き、課題研究で重点的に分析する1980年代の運動に加え、1970年代後半の運動についての基礎資料の発掘・収集を行った。具体的には、定期的に各県の被団協に向けて発送された「事務局連絡」をはじめ、運動方針の草案、代表者会議の議題や議事録、国会要請運動関係の資料、「被爆問題市民団体懇談会」関連資料、基本懇答申後の国民大運動などの資料を収集し、テーマ別に整理した。さらに、東京において、被団協運動に関わってきた関係者たちから、1970年代後半から1990年代にかけての運動(特に国家補償、援護法制定要求関連)を中心に聞き取り調査を行った。 韓国被爆者運動に関しては、「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」機関紙を第1号(1972年2月)から第131号(2007年11月)まで収集し、在韓被爆者の日本政府に対する補償要求運動を中心に整理した。 韓国(ソウル)では、韓国被爆者協会を訪ね、長年韓国被爆者運動にかかわりをもってきた関係者から自分史的な聞き取りも含めて調査を行った。 さらに、現時点での中間報告を兼ねで、いくつかの口頭発表と論文発表を行った。具体的には、インターアジアカルチュラル・スタディーズ学会では被爆者運動と被爆者の語り・沈黙について、「原爆被害と国家補償ワークショップ」では被団協結成時からの被爆者運動と現行法制定までの被爆援護史について発表した。また、原爆被害をトラウマ研究の見地から考察した論文(共著、『戦争と民衆』)と、被爆証言をトラウマ研究と言説分析の見地から考察した論文(『大阪大学日本学報』)を発表した。
|